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【エバマガ2021-20/20最終回】宇宙飛行士選抜試験の正体 最終選抜試験⑦ ~最後に決めるもの&ラストメッセージ~

【追記】2023.1.21 エバマガ2021として体裁を整えるレベルの再編集をしました。

~最後に決めるもの&ラストメッセージ~
最終選抜試験編のラストであるとともに宇宙飛行士挑戦エバマガ最終回です。
ここまでエバマガを読んでくださった方は、ぼくが伝えたかったことをすべて受け取ったことになります。
宇宙飛行士というと果てしない雲の上の存在という感じがまだ拭いされないかもしれませんが、決して生まれながらのスーパーマン/スーパーウーマンがなるわけではなく、小さなことを大切にしてそれらを積み重ね、地道に目の前のことを一所懸命やっていった先に、いつの間にか近くのステージに辿り着き、もう少しで手の届くところまで到達できる、そんな究極的ゴールです。
最後の最後に宇宙飛行士候補として選ばれる決め手はなんでしょうか?
ぼくは自分に足りなかったものが何か、考え続けてきました。
ぼくにあと何があれば選ばれていたんだろう?
それは山ほどありました。改善できる点はたくさん見つかりました。それを自覚させてくれる試験でした。
そもそもなんで最終選抜まで残れたんだろう?という疑問も湧いてきました。少なくとも10名に選ばれるということは、どこか宇宙飛行士としての資質が買われたはずなのです。
結局、正解は分かりません。自分が自分の中でそれっぽいものを追求し、それに納得できるかどうかです。
ただ、ひとつ言えることは、指先まで届きかけたという事実。それは何かに挑戦するたびに「ぼくならできるはずだ」という勇気をくれました。
最終回の今回は、考え続けたぼくが最後に皆さんにお届けする渾身のラストエバマガです。

エバマガ総括 伝えたかったこと

これまで10か月に渡り、『宇宙飛行士挑戦エバンジェリストマガジン』を発行し続けてきました。
プロフェッショナル宇宙飛行士という、一体何がどういったレベルで求められるのかが分からない、憧れはするものの究極的な存在過ぎてそれに近づくために何をすれば良いのかが分からない究極的な目標に対し、どう立ち向かっていけば良いかおよび正しく挑戦するためのアプローチを、ぼくの13年前の挑戦の経験から得られた知見をベースに体系化したものがこの『宇宙飛行士挑戦エバンジェリストマガジン』です。

宇宙飛行士というものを正しく理解し、宇宙飛行士に必要な資質を考えに考え抜き掘り下げ、それを審美眼のごとく“ライト・スタッフ”を見出し見抜く選抜プロセスを審査側視点から考察し、求められるものが何かを徹底的にあぶり出しました。これ以上のものはないと自負できます!

本気で宇宙飛行士を目指す方に向けて、挑戦者の方がそれぞれのポテンシャルを最大限発揮し、宇宙飛行士挑戦においてベストパフォーマンスで挑むことができるよう、ぼくが触媒となってサポートしていく気持ちで、全身全霊をかけて書き連ねてきました。(無駄はそぎ落とし13万字のボリューム)

ファイナリストスペシャル対談は、より多角的な視点で宇宙飛行士挑戦を捉えたい想いから、ファイナリスト・選抜とりまとめ・選抜密着メディア・宇宙飛行士挑戦者・宇宙ライター・宇宙飛行士と幅広い方々をお招きしてお話を伺いました。貴重な時間を割いて下さって対談を受けてくださった皆様に大感謝です。

では、エバマガ記事(全20本)&対談(全10本)を目次にして振り返ってみましょう。(リンクさせています)

〇宇宙飛行士を本気で目指すきみへシリーズ
① 〜宇宙飛行士とは何か?をとらえよう〜
② 〜夢を目指す思考法 プランBと一石二鳥〜
③ 〜月について知ろう①〜(世界が再び月を目指す)
④ 〜月について知ろう②〜(月探査・アルテミス計画)
⑤ 〜医学検査に向けて&タイムマネジメント〜 

〇宇宙飛行士選抜試験の正体シリーズ
実はめちゃくちゃ大事なこと① 〜押さえておきたい選抜のしくみ〜
実はめちゃくちゃ大事なこと② 〜意外過ぎる大事なこと〜(マンダラチャートで夢を具体的目標へ)
実はめちゃくちゃ大事なこと③ 〜JAXAから出された次回選抜の方向性〜
実はめちゃくちゃ大事なこと④ 〜”セレクト・アウト”をくぐりぬけよ①〜(筆記試験)
実はめちゃくちゃ大事なこと⑤ 〜”セレクト・アウト”をくぐりぬけよ②〜(英語試験)
実はめちゃくちゃ大事なこと⑥ 〜”セレクト・アウト”をくぐりぬけよ③〜(書類選考)
実はめちゃくちゃ大事なこと⑦ 〜非認知能力を高めよ①〜(数値化できない人間力)
実はめちゃくちゃ大事なこと⑧ 〜非認知能力を高めよ②〜(CRM:クルーリソースマネジメント) 

〇宇宙飛行士選抜試験の最終選抜試験シリーズ
最終選抜試験① 〜最終選抜試験の全貌〜
最終選抜試験② 〜閉鎖環境試験のすべて①〜(閉鎖試験全貌とディベート)
最終選抜試験③ 〜閉鎖環境試験のすべて②〜(チームスキル)
最終選抜試験④ 〜閉鎖環境試験のすべて③〜(個人課題)
最終選抜試験⑤ 〜NASA試験のすべて①〜(オペレーションスキル)
最終選抜試験⑥ 〜NASA試験のすべて②〜(覚悟と人間性を見る面接)
最終選抜試験⑦ ~最後に決めるもの~(今回)

〇ファイナリストスペシャル対談(全10回)
宇宙飛行士選抜を様々な視点から眺めることができるファイナリストスペシャル対談10本パックはこちら(購読者回除く)
白壁弘次(第5期選抜ファイナリスト、ANA機長)前編後編
小原健右(第5期選抜密着NHK記者)
柳川孝二(第5期選抜事務局長)
江島彩夢(米コロラド大博士課程2年)&都村保徳(英ブリストル大4年)
購読者①
国松大介(第5期選抜ファイナリスト、沖電気エンジニア)
サラリーマン宇宙飛行士(第6期選抜挑戦者)
林公代(宇宙ライター)
購読者②
山崎直子(元JAXA宇宙飛行士)

最後に決めるもの

最終的な宇宙飛行士候補者の選定は、簡単に言うと、これまで解説してきた多種多様な試験項目のすべてをレーティング(例えば、A~C)し、集計して上位から選んでいくというやり方で行われます。

最終選抜試験においても、“足切り”に近い“不適“項目による脱落もあるのではないかと思っています。また、点数が非常に拮抗しているような場合には審査委員による審議が行われるであろうと思います。それぞれの項目に対するレーティングを集計して数値化したとしても、その数値に対する厳密性といいますか、”誤差”はある程度存在することになるからです。総合点で評価しようとする場合、審査項目ごとに付与される点数の割合についても、その重要性から重みづけがされるべきですが、その厳密性にも“誤差“が伴うでしょう。

そうした厳密な審査を行うJAXA宇宙飛行士選抜における審査委員会の構成は以下のようになっています。

JAXA宇宙飛行士選抜委員会構造

補足:宇宙飛行士審査委員会(Astronaut Review Board)をトップに、資質審査委員会(Competence Review Committee)と医学審査委員会(Medical Review Committee)/精神心理審査委員会(Psychiatric/Psychological Review Subcommittee)がそれぞれ独立している構成です。独立しているところがポイントで、資質審査委員会でいかに高く評価されようとも、そんな事お構いなしに医学審査で“リスクあり”と評価されてしまえば、“不適”とされてしまうということです。

宇宙飛行士候補に選ぶということは、その人の人生を預かることにもなる非常に重い責任があります。加えて、日本人宇宙飛行士を選ぶということは、日本国代表を選ぶということでもあります。JAXAという一組織にとどまらない責任が課せられるものです。ですから、文部科学省をはじめとした政府や、国民に対しても、なぜこの人を宇宙飛行士候補に選んだかに対する客観的説明ができなければなりません。そのため、重厚な審査・選抜体制を構築し、客観性が担保できる厳密な審査を行う必要があります。

総合人間力を測るような宇宙飛行士選抜試験では、客観的な数値が難しい側面が大いにしてあります。
数値化することが難しい各試験項目に対するレーティングは、審査委員ひとりひとりがつけていくことになります。場合によっては、複数の審査委員のレーティングを集めて平均化処理を行うこともあるでしょう。つまり、ひとりの審査委員がレーティングした時点では主観が伴うことになります。それを場合によっては審査委員の協議を行いながら平均化処理をしていくことで、主観レーティングを最大限多重化していくことで、客観性を担保するわけです。

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