宇宙兄弟 x 宇宙飛行士選抜試験~ファイナリストの消えない記憶~ サイドストーリー”誓いのサイン”
見出し画像

宇宙兄弟 x 宇宙飛行士選抜試験~ファイナリストの消えない記憶~ サイドストーリー”誓いのサイン”

『宇宙兄弟』でぼくが大好きなシーンがある。

宇宙飛行士ビンスと技術者ピコ、少年時代の友達リックの3人の物語だ。

3人は閉塞感の漂う小さな町で育ちながら、宇宙に魅せられ宇宙に夢を見る。リーダー格で、3人を夢へ先導するリックは、不慮の事故で亡くなってしまうのだが、残された2人ビンスとピコは、その魂を受け継ぎ3人の夢を実現させる。
ピコが設計した着陸船「RICK」で月面に降り立つビンスを、リックの代わりに管制官として支えたのがムッタだった。
その3人が交わす“誓いのサイン”がある。

この“誓いのサイン“は、約束をする指切りげんまんとは違う、熱い魂を直接ビリビリと伝え合い、互いが背負う責任を確認し合う儀式だった。

画像1

©小山宙哉/講談社

ぼくがこの本を書こうと思ったきっかけはいくつかある。

今回は、その中のひとつ、選ばれた3人の新世代宇宙飛行士との関係性にフォーカスしてみよう。
上記の『宇宙兄弟』シーンにぼくが共感する理由がお分かりいただけるはずだ。

ぼくは3人に、宇宙飛行士候補になっていたかもしれない自分を投影し、ライバルのように切磋琢磨しようとする気持ちを抱いていた。
3人が宇宙飛行士の認定を取得すべく、世界の猛者たちに揉まれながら厳しい訓練に没頭していたころ、ぼくは日本が誇る宇宙船「こうのとり」のフライトディレクタとして世界初に挑んでいた。まさに切磋琢磨。次世代を背負うため、新しい未来を切り拓くため、それぞれが己を磨く日々。

筑波宇宙センターやヒューストンでたびたび会う機会があった。そのたびに挨拶のように握手を交わしていたのだが、3人の握手は訓練を経るごとに強くなっていった。「調子はどう?」と投げかける言葉以上に、握手を通じて会うごとに高まっている自信や覚悟がガツンとぼくの中に飛び込んできた。そして「負けてられない!」と強く刺激を受けた。

2010_4人で

2010年撮影@ヒューストン

この関係性は今でも続いている。

「こうのとり」ミッションや3人のISS長期滞在ミッションでのコラボに加え、回収カプセル開発や、次世代宇宙船開発の現場でも、密接な協力関係を築いている。
宇宙飛行士が持っている世界の宇宙船情報を得て、さらに宇宙飛行士視点を開発に取り込む。そこには、未来の日本版有人宇宙船開発につなげる強い想いと意思が込められている。

宇宙飛行士選抜試験で選ばれなかったあと、
選ばれた3人を間近で見ることに、何ら苦痛はなかった。
むしろ、共に切磋琢磨することで、ぼくにとってプラスでしかなかった。ぼくには宇宙船開発という彼らにできないことができる。
お互いが協力してできることはとても大きいはずだ。
それぞれが切磋琢磨しながら成長し、そしてその力が一つに合わさったとき、もの凄いパワーで日本の有人宇宙開発を前に進めていくことができるはずだ。

こんなにも素晴らしい一生ものの出会いがある「宇宙飛行士選抜試験」と、12年間に渡るその後のものがたりを、ぼくと同じ目線で追体験しつつ、楽しんで読んでいただけたら嬉しい。

KoyaTube Premium Yearbook Vol.1(コヤチュー部プレミアム発行)に掲載したものを再編集したものを許可を得て掲載しています。

============

今後も不定期で『宇宙兄弟 x 宇宙飛行士選抜試験~ファイナリストの消えない記憶~ サイドストーリー』公開していく予定です!

\(^o^)/スキありがとうございます!
2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。