【エバマガ2021-7/20回】宇宙飛行士選抜試験の正体 実はめちゃくちゃ大事なこと⑤ ~”セレクト・アウト”をくぐりぬけよ②~
英語(語学習得)の極意
宇宙飛行士選抜試験において英語は重要です。
なぜならば、英語が世界の共通言語であり、様々な国籍の他国の宇宙飛行士と意思疎通するため、そして訓練の過程においても、コミュニケーション手段として必須だからです。宇宙飛行士として生きるためには避けて通れません。もちろん、選抜されてからも継続的に頑張ることを大前提として、訓練を受けるにあたって支障ないレベルであることを、選抜段階で求められます。
「日本で働くなら日本語覚えてね」と同じレベルで、「宇宙で働くなら英語覚えてね」というわけです。自動翻訳などの技術はこれからも上がっていくでしょうが、リアルタイムで命のかかるやり取りをしなければならない宇宙飛行士に対し、英語がいらなくなる日は来ないと思っていいでしょう。(かなり優れた翻訳機ができたとしても!)
第5期選抜試験では、最初に書類審査+英語試験でセレクト・アウトが行われました。その中でも、英語試験はひとつのハードルになっていました。
ぼく自身、実は“英語が苦手“でどうしたら英語ができるようになるかをずっと考える学生時代を過ごしていましたので、ここでは”ぼくの長年に渡る苦労とそこからの気づき”をお伝えしたいと思います。語学習得に近道はない、という話ではありますが、苦労している方こそぜひ読んでいただければと思ってさらけ出します(笑)
第5期選抜における英語試験
では、第5期選抜で課せられた英語試験について見ていきましょう。
英語試験@第5期選抜
まず第5期選抜試験の最初で行われた英語試験について見てみましょう。
第5期では、書類審査と英語試験が最初に課せられました。英語試験は2回設定(6月と7月の土日)され、どちらか選ぶことができました。全国数か所の試験会場にて行われる試験だったのですが、海外在住者は免除で、1次試験で帰国してもらう際に、追加で英語試験を受ける形が取られました。
第5期選抜で選抜事務局長を務められました柳川さんの著書『宇宙飛行士という仕事』第3章によると、
とあります。7割の正解率が求められたということは、正確には違いますが、概ねTOEIC 700点(ライティングも有り)というのが下限ライン言えるかと思います。
これは宇宙飛行士訓練を受けるにあたって最低限持っておくべき英語力という位置づけでセレクト・アウトに用いられた基準になりますので、あくまで足切りラインと考えるのが妥当でしょう。
念のため添えておきますが、それが宇宙飛行士になるにあたって十分な英語力ということでは決してありません。宇宙飛行士に求められる英語力は、選ばれてからも日々研鑽が必要なネイティブに近いレベルですのでお間違いなきよう。逆に言うと、選ばれてから頑張れば良いということでもあります。
2次試験@第5期選抜
各種面接試験の1つとして、英語の面接試験がありました。
15~20分程度の英語の口頭試験です。シチュエーションを与えられ、それにまつわる英会話をするというものでした。たしか、道を知らない外国人に、道を案内するというような設定だったと思いますが、とにかく簡単な日常会話レベルの英語チェックであり、とても易しかったです。面接官はおそらく米国人の方でした。
最初の英語試験といい、2次試験といい、このレベルのチェックでいいのか?と当時は思いましたが、足切りレベルとしてはあまり高く設定しないという方針だったようです。
最終(3次)試験@第5期選抜
2次までとは打って変わり、最終選抜では一転して実践的な英語力が求められました。
NASAの宇宙飛行士選抜試験の一部を1週間かけて受けましたので、もはや英語(語学)の試験ではなく、英語で行われる実践的な試験であり、もはや訓練に近いものがありました。前提として、英語力は測られることになったと思います。
いくつか実際の試験での実例を紹介しましょう。
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