チームスキルを自分色に高める!
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チームスキルを自分色に高める!

Takashi UCHIYAMA/内山崇

○宇宙開発現場におけるチームスキルの重要性

宇宙開発はチーム作業という色が非常に濃い分野と言えます。
一つのミッションに数えきれないほどの人たちが関わっています。宇宙船のネジ1本締めた人から、最前線の現場で宇宙ミッションを行う宇宙飛行士まで、開発からミッション完了までそのミッションに関わる人は相当な数になります。チームからチームへバトンが渡され、宇宙という過酷な環境を舞台に、前人未到のミッションが遂行されるわけです。

ぼくがnoteで連載してきた『宇宙飛行士挑戦エバンジェリストマガジン』ではこれまで何度かに渡り、チームスキルの重要性をお伝えしてきました。
最終選抜における閉鎖環境試験、世界で唯一JAXAだけが宇宙飛行士選抜に用いている試験ですが、宇宙ミッションを模擬した環境でたくさんのチーム課題に取り組み、そこでのパフォーマンスを測るというものです。そこで評価されるのは単なる“チームスキル“という言葉では括り切れない、非認知能力全般に渡る”総合人間力“とでも言うべきものでした。

注:エバンジェリストマガジンは途中まで無料で読めますが、有料記事です


では、なぜそれほどまでにチームスキルが重要視されるのでしょうか?

宇宙開発は非常に長丁場(5~10年)であり、また、リスクの高いことに敢えて挑戦するためたくさんの困難にぶち当たります。それをチームで乗り越えるわけですが、そのチームを力強くリードできる人間、その人がいるとチームメンバーが自分の力以上のものを発揮できる、チーム全体をポジティブにし、パフォーマンスを最大化できる力、そういったことをできる人が求められるわけです。

特に、自らを危険と隣り合わせの最前線の宇宙に身を置く宇宙飛行士が抱える重責や伴う緊張は計り知れないものでしょう。そのような環境に置かれても、自分のパフォーマンスを高く発揮し、しかもそれを長期間維持することができる、さらにはチームの仲間へも良い影響を与えることができる人が、宇宙飛行士に適していると言えます。

JAXA宇宙飛行士選抜の審査員は、「一緒に働きたいと思える人」を選びたいと言います。
NASA ASB(Astronaut Selection Board)のメンバーは、「命を預けられるほど信頼できる人間か」を見極めると言います。

宇宙飛行士選抜の過程で、”いったいその人の何を見たいのか?” そのヒントが見えてくるのではないでしょうか。

JAXAが公表している「宇宙飛行士候補者に必要な資質項目案」をカテゴリ分けし、どの選抜プロセスでその資質を測っているか、2008年の選抜試験を例にマッピングしてみました。ここで挙げた「チームスキル」と「現場対応力」を合わせて、広義の“チームスキル”として捉えると、その重要性がよくわかると思います。

JAXAが宇宙飛行士候補者に求める能力群とその能力を測る手段マップ
🄫Takashi Uchiyama


○宇宙飛行士選抜挑戦エバンジェリストが目を付けたFFS理論

FFS理論との出会い

ぼくとFFS理論との出会いは、FFS理論と『宇宙兄弟』がコラボしたこちらの本でした。

ぼく自身が多面性を持っている自覚があることから、その一部だけを取り上げて行う性格検査のようなものはあまり関心がありませんでした。だって、昔の友達といる自分と会社での自分って違ったりするじゃないですか。

しかし、もう少し深くFFS理論に触れる機会を得たことで、このFFS理論は自分が思っていたいわゆる性格検査とは全く違うことが身に染みてわかったのです。
こりゃ、ホンモノだ!

FFS理論の特徴

FFS理論の特徴は、ぼく流に3つにまとめると以下のようになります。

✓  人間の特性を5つの因子(非常にシンプル)を用い、特に個人のストレス特性を分析

✓  自己分析に留まらず、他者との関係性まで分析(人との関係性をカガク)しており、チームビルディングやチームの生産性向上に役立てられるところが他に類を見ない

✓  小林惠智博士により米国政府機関からの依頼で開発・適用されたものであり、相当量の統計データに基いており、非常に精度が高い

FFS理論の生かし方

まず自己を知ることから始めます。

しかし、その自己分析結果から、自分の良くない点を直していく、ということではありません。

自己の特性であり個性は、そう簡単に変えられるものではなく、無理にそれを変えて苦手克服しましょうということではありません。
その個性・特性を把握し、それを生かす形でチーム活動へ貢献することを目指すのです。

また、他人の特性を知ることで、その人の特性を最大限生かす関わり方をすることにも使えます。人間関係を円滑に、良い関係性構築の大きなヒントとすることにFFS理論を使うのです。

さらに、特性に応じてチーム編成をし、個々の能力を最大限生かせるチーム作りをすることまでできます。仕事では、スキルベースでチーム構成がされることが多いと思いますが、個々の特性の集合体としてチームパフォーマンスを最大化させることがFFS理論によって可能になるのです。

とはいえ、チーム活動はそう簡単にはうまくいかず、チームメンバー内の人間関係の難しさが障害になること多々あることは、ぼくも含め、誰もが少なからず経験されているのではないかと思います。

「この人がいるとチームがうまく回る」  逆に、「この人と一緒だとなんかうまくいかない」という経験をされたこと、あるのではないでしょうか。思考の癖なども含めて、総じて相性というのが良いでしょうか、馬が合う合わないとか、良さをつぶし合ったり、逆に相乗効果でお互いの良さを引き出し合ったりということがおこるわけです。

これは目から鱗の大事なポイントですが、すぐに補完し合える関係性には即効性があるものの、最初は取っつきにくい異質性の強い関係性の方が、時間をかけてシナジー効果が発揮できるようになったときにはより強さを発揮することがある、ということも重要です。

メンバーの組み合わせによって、そのチームがうまく動くかどうかが左右されます。チームによって、メンバーが発揮できるパフォーマンスに差が出るのです。チームメンバーの能力を最大限発揮できるか?発揮させるのはどうすれば良いか?そういう視点を持つことは非常に重要です。そういった視点をもって、チーム活動に取り組む経験を積んでいくことが、チームスキルを向上させていくことにつながるでしょう。

(参考)FFS理論を実践的に組織に生かすHuman Logic Laboratoryのサイト


○AIMでやってみた!

FFS理論のワークショップを受けてみてまず感じたのは、「これまで仕事等で感じてきた自己の反省点・弱点を指摘され、みな思い当たる節があるとつい苦笑いしてしまう」というむしろ清々しいくらいの爽快感でした。

「これはAIMメンバーにぜひ早いうちに体感してもらいたい!」

早く気づきを得て、行動変容をおこし、バージョンアップして欲しい!ということで、古野さんに無理をお願いし、ぼくが運営している宇宙飛行士挑戦コミュニティ『AIM』でワークショップを開催していただけることになりました。

今回は運営側として参加しましたので、事前に行った分析からチームにおける議論がどのように展開されるかの予想をあらかじめ見せてもらうことができました。これを古野さんは、実際にはまだ会って話したこともない人に対して予想しているわけです。
そして、実際のワークショップにおけるチーム議論を聞いていると、その予想通りの展開に思わず笑ってしまいました。

また、その特性の出方は、同じチームのメンバーとの関係性により変化しうるものであり、このグループは補間的な関係が強いメンバー構成のため、面白いようにメンバーそれぞれの特性が現れます。

そんな考察をしながらも、非常に高いレベルで議論を時間内にまとめていくチームパフォーマンスにとても感心させられました。

様々なメンバー構成(組み合わせパタン)で、何度もやることでよりスキルを磨くことができるだろうと確信しました。1人ではできない、チームだからこそ発揮できる掛け算のパフォーマンスを数多く経験する(失敗や反省も含め)ことが、その人のチームスキルの能力に厚みを増すことになると思います。
どんな相手とでも、どんなに複雑で難解なお題に対しても、議論を戦わせながらも、チームメンバーの良いところを最大限引き出し、最高のチームパフォーマンスを発揮することができる力を身につけることを目指す、AIMではそんな活動をこれからも展開していきたいと思っています。


○AIMメンバーの感想集(抜粋版)

時間制約があり、自由な発想やアイデアを必要とするようなテーマに対し、AIMメンバーはそれぞれの特性を生かしたチーム議論を展開しました。これはハイレベル!と感心しつつも、いくらでも反省点は見つかるもの、というのがこういったグループワーク形式の醍醐味だと思います。

参加メンバーのワークショップ終えたての生の声をいくつか紹介します。

✓  事前の診断で、日本人には少ない凝縮性と拡散性が高いタイプと出て、疑わしい気持ちもあったのですが、実際のグループワークでは予想された通りの振る舞いをしており笑ってしまいました。

✓  自分の突き抜けた特性は諸刃の剣で、人間関係を築く前にこの特性をいきなり全面に出して接すると引かれることは自覚しているものの、ある程度控えてしまうと、期待された成果が出ない。このバランスをとる能力が今後の課題。

✓  プレッシャーやストレスのかかった状態でどのような思考を取りやすいかを予め知っておくことは、選抜だけでなく今後の人生でも役立つ。

✓  家族のような超長期間ミッションとなるチーム力においても、自分の強みを意識することで、ここ数日早速効果が出ていると実感しています。


○さいごに

高いレベルで宇宙飛行士選抜に臨んでいく、特にセレクト・インプロセスに立ち向かうにあたり、FFS理論を使って自己の特性を知り、自分の得意なチームスキルに磨きあげることは非常に有益だと思いました。
もちろん、宇宙飛行士選抜に限ったことではなく、あらゆるチーム活動全般に多い役立つと感じます。

興味をもっていただけた方は、まずはこちらからどうぞ!


▼ 宇宙飛行士挑戦コミュニティ AIM (Astronaut In the Making)はこちら

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Takashi UCHIYAMA/内山崇
2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。