ドМ合宿の効能
はじめに
宇宙飛行士挑戦コミュニティAIMで生まれたドМ合宿。今回AIMの一員でもある黒田有彩さんが、ご自身のYouTubeチャンネル『ウーチュー部』によりこの取り扱い注意のドМ合宿をうっかり世に出してしまいました。
となれば、しょうがあるまい。なぜこのコミュニティでこのような活動をしているのか説明いたししましょう。
ドM合宿のはじまり
宇宙飛行士選抜受験者にはドMが多いというのはもはや定説と言っても良いでしょう。
中でも特にドМ癖が秀でたKosmic Koheiさんは、三半規管を鍛える方法のひとつとして、“水泳でクロールをしながら左右の耳を水面に打ちつける“という驚きの持論を展開しました。
それに触発され、夏に向けたオフライン企画を立てよう!となり、当初は富士急ハイランドへ行ってアトラクションに乗りまくって三半規管を鍛えるとか、ジムへ行ったりプールで立ち泳ぎしたり、キャンプもいいね!などという企画検討の流れから、”滝写真家”という謎のコールサインを持つ大塚さんが『だったら、沢登りを企画しますよ。みんなで滝を見に行きましょう。』と企画が立ち上がったのでした。これがドМ合宿と命名されたのでした。
ドМ合宿ヒストリー
今期2022年の全4回のドМ合宿は以下のとおりでした。全4回とも趣の異なる顔を持った山・滝という大自然。毎回ドラマがありました。(詳しくは別途、合宿記を書き下ろし中です)
① 山梨県北精進ヶ滝(8/20-21) ドМな参加者8名
② 栃木県足尾松木渓谷(小足沢大滝)(9/22-23) ドMな参加者4名
③ 長野県岩倉川支流樽ヶ沢(10/1-2) ドMな参加者6名
④ 三重県熊野川支流立間戸谷(屏風滝)(10/22-23) ドMな参加者3名
宇宙飛行士訓練との比較
宇宙飛行士のノンテクニカルスキルの訓練として、サバイバル訓練系のものがいくつかありますが、そのうち、ESAが力を入れている惑星探査をにらんだ訓練があります。その名もCAVES。
CAVESとは、Cooperative Adventure for Valuing and Exercising human behaviour and performance Skills の略になります。
宇宙ミッション環境に近い状況でチーミング含めたチーム行動スキルを高めるための訓練です。惑星探査も見据えて洞窟(Cave)を使っている点も見逃せません。
そして、このCave環境は、宇宙環境と類似点があります。
・外界から隔離されている
・昼夜周期がない
・閉じ込められている
・プライバシーがない
・技術的な挑戦
・衛生や快適性に制約がある
・常に一定のリスクにさらされている
こういった環境におけるチーム活動は、様々なチームスキルを向上させてくれます。
そして、CAVES訓練の中では、以下のような実地訓練を行います。
① 事前に洞窟の地形的特徴を学び、洞窟内の地図の作成方法、科学サンプルの採取方法、洞窟内での写真撮影方法、ロッククライミング技術、水泳技術を学ぶ
② 安全のための遵守事項、緊急対応の確認
③ 洞窟内探索、キャンプ設営、洞窟内の測量、地図作成、水質調査、生物サンプル採取、写真撮影
④ 帰還後、デブリーフィング。データ/サンプル整理作業、チームディスカッション、報告イベントなど。
この辺りを見ていくと、大塚リーダーに任せっきりになっているドM合宿の事前の地図確認やプランニング、また、緊急事態に対する備えなどについては、改善の余地があると思います。
身体を駆使して山や沢を乗り越え、素晴らしい景色に出会い、無事に帰還し達成感を得るのみならず、上記も含めたひとつのミッションとしての完遂を目指したいと思っています。
●参照情報
2019年に参加した大西飛行士の訓練報告(めっちゃ薄い)
※通常2週間以上の訓練が、2019は天候が悪く6日間に短縮されました(さすがカザフスタンに雨を降らす男 大西卓哉)
Caves 2019のショートYouTube (6分弱)
Caves 2019のFlickr(写真で色々と雰囲気たどれます)
Caves & Pangaeaまで見たい方はこちら ←ESAは惑星探査に力を入れている
ドМ合宿の効能
先に述べたCave環境との共通性を見てみます。右側の符号はドM合宿との共通性です。チームスキルを鍛える環境としては十分備わっていることがわかります。
・外界から隔離されている 〇
・昼夜周期がない ×太陽が出ていないと基本的には動けない
・閉じ込められている ×むしろ大自然に開放されている
・プライバシーがない 〇
・技術的な挑戦 〇
・衛生や快適性に制約がある 〇
・常に一定のリスクにさらされている ◎
では、分かりやすい画像でドМ合宿の様子を垣間見てみましょう。
画像は一瞬を切り取っているのみですが、それぞれの行程は命の危険を感じるところすらある険しいものです。気を抜くことはできません。
そんなドМ合宿全4回をフル参加したぼくが感じたドМ合宿の効能を順不同で列挙してみます。
日常からの極限的解放
視覚、聴覚、嗅覚、五感すべてに究極の贅沢
自然と同化できる
遺伝子に刻まれた野生を取り戻せる
ハングリー精神を取り戻せる
自然のありがたみを思い知れる
文明のありがたみを思い知れる
便利なものに頼り切って鈍った身体と精神を叩き直せる
当たり前のことが当たり前ではないことに気付ける
死ななければなんとかなると思える
歩くことが苦でなくなる
重い荷物が苦でなくなる
そこにあるものでなんとかなる
やればできることがわかる
挫けない根性が身につく
そこにあるもので楽しめる
クライミングや懸垂下降技術を習得できる
一定リスク下でも精神を研ぎ澄ますことができる
一定リスク下でのタイムクリティカルな状況判断力を向上できる
一定リスク下でのチーム行動力を向上できる
どこにでも危険は潜んでいることを学べる
全員で乗り越える一体感、助け合うチームの素晴らしさを経験できる
スマホなんてなくてもいいと思える
生きて帰れたことへの感謝、生を意識できる
危機管理能力向上(←リーダーについていくだけではまだまだ不足!)
全4回の合宿記録を執筆中です。お楽しみに!!