宇宙飛行士選抜試験の正体 最終選抜試験④ ~閉鎖環境試験のすべて③~
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宇宙飛行士選抜試験の正体 最終選抜試験④ ~閉鎖環境試験のすべて③~

~閉鎖環境試験のすべて③~
最終選抜試験編の4回目です。
いやいや、まだ最終選抜なんて・・・と思う方もいるかもしれませんが、最終的に選ばれるには最後にここを通過しなければなりません。最初の関門セレクトアウトを抜けなければ先に進めないので、セレクトアウト向けの準備ももちろん大事ですが、付け焼き刃では通過できない最終選抜に向けた準備も早めに頭に入れておくことは必要なことでしょう。期間1か月半に渡り、18日間におよぶ試験で宇宙飛行士候補者を選ぶ試験は、超濃密です。JAXA宇宙飛行士選抜側との最後の真剣勝負、閉鎖環境試験シリーズの最終回です。

閉鎖環境試験シリーズ最終回

これまでの2回では、隔離試験の意義である総合的な人間性評価のうち(以下に再掲)、チームスキルにフォーカスしてきました。
ラストの3回目では、そういった隔離ストレス下における個人のパフォーマンスに関わる試験にフォーカスします。

<再掲>1週間の隔離試験の意義(専門家の回答)
宇宙飛行士資質を見抜くための受験者評価のための試験や面接は決して完璧とはなり得ない。宇宙での長期ミッションへの適性は、総合的な人間性評価のための手段が必要。
・閉鎖試験は、長期宇宙ミッションを模擬した隔離施設で1週間滞在に耐えられるかが目的ではない。受験者の行動を継続的に観察することで、評価の判断ソースを最大化することである。(精神ストレス下での安定性、グループでの行動スタイル)
ストレス環境下での行動を観ずに宇宙飛行士候補を選抜するべきではない。最終選抜では複数の専門家によって観察が行われるべきである。
隔離施設における試験は、受験者に均質的にストレスを与えることができ、複数の専門家が観察することができる理想的な環境である。

精神・心理的な安定性を測るものもあれば、どれだけ他人の心を動かすことができるかであったり、これまで経験したことのない宇宙飛行士最終選抜での閉鎖環境試験という非日常の体験から何を学び取るか、という能力を測るものまで幅広い評価項目がありました。

では、ひとつひとつ見ていきましょう。

閉鎖環境試験における個人種目

(1) エコマッピング
個人的に、閉鎖環境試験で最も興味深かった検査であり、自分の無意識下での傾向に客観的に向き合うことができた気づきの多い検査でした。
ちょうど閉鎖環境試験の中間地点で行われた検査で、自分を中心として、他の受験者9名との距離感、働きかけの偏り、遠慮/緊張等の有無、受験者同士のグルーピングを1枚に図示(例:下図)するというものでした。

・他の人に見られないように/見ないように行うこと
・現時点での正直なマッピングを行うこと

という注意書きがありました。ので、10人は閉鎖施設に散らばって各人一人になって描きました。

4_14_エコマッピング

エコマッピング例

つまり、同じグループに対するマッピングを10人が別々に行うというものなので、自分と他者との関係性を捉えられているか?、また、グループメンバーの関係性をどれだけ客観的に捉えられているか?が、10人それぞれの視点で描かれたものを審査員は並べて観察することができることになります。人間関係の距離感・・・これはなかなかにシビアなことですよね。片方は非常に近い距離感だと思っているのに、もう一方は遠い距離感だと思っていることがあり得るわけです。

まだ会って数日の人、2次試験から一緒の人、大学同期と入り混じっていることもあり、悩みつつも、ぼくがその時感じていたその人との距離感と、仲の良いグルーピングから図示し始めました。なぜこの人とは距離感を感じるのだろう?なぜこの人に積極的にアプローチしていないんだろう?というのは、大いに考えさせられました。
そして、コミュニケーションが偏ってしまうのは、もったいないことだなあと気がつきました。距離を感じている人に対して、ちょっとしたきっかけさえあれば、その人のことをもっと知ることで新しい関係性が築けるようになるはずだと考え、もっと積極的にアプローチしてみようと思いました。
自分に対する大きな気づきでした。

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Takashi UCHIYAMA/内山崇

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2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。