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ファイナリストスペシャル対談Vol.2(2021.1)


2021年1月のスペシャル対談ゲストは、エポックメーキングな出来事だったとも言える、12年前の第5期宇宙飛行士選抜試験の密着取材をされたNHK小原記者(当時)です。お堅いJAXAそしてNASAをも説得し、さらには受験者からもその溢れる熱意で取材許可をとりつけた立役者。
マスコミ、選抜審査側、そして受験者3者の視点を知り尽くし、全員が人生を賭けた本気の挑戦の場で見たものは何だったのか?
小原さんが放った「内山さんの本は“救い”だった」「第5期選抜の密着はまだ終わっていない」という言葉の真意は?お楽しみください!!
***小原さんは、現在 札幌におられますのでリモートになります***

※対談の様子は動画にも収録しています。記事の最後から閲覧できます!

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はじめに

内山崇(以下、内山):皆さんこんにちは。ファイナリストスペシャル対談の2回目。2021年1月のスペシャル対談になります。今日は僕もすごい楽しみにしていたんですけれども、12年前の第5期宇宙飛行士選抜試験で我々の選抜試験に密着されたNHKの小原さんにゲストとして来ていただきました。12年前のことや今年の選抜試験のことなどを含めてお話ししていきたいと思います。小原さん、今日はよろしくお願いします。

小原健右(以下、小原):よろしくお願いします。

内山:僕は今回(自著)本のなかで度々NHKさんのことにも触れさせていただいていて、もしかしたら読者のなかには僕がNHKさんに対して、批判的に捉えていると思われた方もいるかもしれないなと思っていて。そこは全くなくて、後で話すと思いますが、とても仲良くしています。試験密着当時からその後も含めて、一緒に飲みに行って酔い潰れるぐらい話しをすることもありましたね。

実は僕が本を書くことになった2年前に、小原さんには相談をさせていただきました。そういった経緯もありまして、今日はすごく楽しみにしておりました。小原さん少し自己紹介してもらってもよろしいですか?

小原:はい。試験当時の12年前は東京のNHKにある科学文化部という部署にいました。そこに文部科学省の記者クラブがありまして、そこでJAXAを担当していました。選抜試験の後はアメリカのニューヨークで特派員をやりまして、スペースシャトルの引退を見守ったり、若田光一さんのフライトや日本人宇宙飛行士の方々のフライトをカバーしたりなどをしていました。また当時は黎明期だったスペースXに代表される民間宇宙開発の取材などもしていました。その後一度東京に帰り、今度はヨーロッパのウィーンで特派員をやり、今は札幌にいましてデスクとして新型コロナウイルス取材などをしています。

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第一部 12年前の第5期宇宙飛行士選抜試験について

内山:小原さんは非常に海外の動向なども詳しい方で、12年前の宇宙飛行士選抜試験に密着をしていただきました。選抜試験への密着は世界的にも初めてでしたし、非常に新しい試みだったなと思っています。そこにJAXAの判断もあって風穴を空けました。今までは悪く言うと閉じられた世界で行われていたことを、世間の皆さんにオープンにすることによって、色々なことを知っていただいて(宇宙開発にとって)良い方向に動いただろうなと思っています。

小原さんはまさに風穴を空けた立役者と聞いているのですが、当時は密着に至るまでは結構大変だったのではないかなと思います。そのあたりはいかがでしょうか?

ーー選抜試験への密着取材は大変でしたか?
小原:大変さでいうと、言い方は悪いのですが「もう二度とやりたくないな」と思いますね(笑)。誤解なきようにお伝えすると、取材よりも密着取材を可能にするまでのプロセスがすごく大変でして、(多忙で)眠れないんですね。言い方が悪いかもしれないですが、血尿が出るんじゃないかというような日々を過ごしていました。というのも一緒に取材した(NHKの)大鐘さん(ディレクタ)が相談に来てくれて、僕がJAXAと交渉をしたわけなんですけれども。最初はやはりけんもほろろというところで「何を言ってるの?」という世界だったと思います。

それを「じゃあどう可能にするの?」というところで、「あの方を説得すれば良いのか?」とか「あの方に会えば良いのか」などあらゆることを常に考えていました。思ったようにことが進まないことも当然ありました。私どもの現場のクルーからは「どうなっているんだ?」という話もきますし、良い番組を作りたいし番組そのものが成立するのかということも含めて、放送の日までずっと気が抜けませんでした。

今振り返れば非常に色んな意味でありがたいし、自分を鍛えてくれた出来事だと思います。ただ「もう一度当時と同じようにやれるか」と言われると、大変だなというのが正直なところですね。

内山:前例にないことをしようとするなかで、保守的にいくと基本手にはNGというところを説き伏せたプロセスがあって。密着は始まったら、それはそれで初めてのことばかりで苦労された中で番組も制作されて本(『ドキュメント宇宙飛行士選抜試験』(光文社新書))も出されましたよね。実は僕は選抜試験が終わった5年ぐらいは読めなかったんですよね。なかなか真正面から振り返ることが辛い時期がありました。

今回は選抜試験から12年が経って本を書き上げて、ようやく真正面から振り返ることができました。小原さんには密着の時から、試験後の後もお付き合いをしていただいていますが、そんな小原さんが今回僕の本を読んだ率直な感想を伺ってもいいですか?

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