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【エバマガ2021-16/20回】宇宙飛行士選抜試験の正体 最終選抜試験③ ~閉鎖環境試験のすべて②

【追記】2023.1.21 エバマガ2021として体裁を整えるレベルの再編集をしました。

~閉鎖環境試験のすべて②~
最終選抜試験編の3回目です。
いやいや、まだ最終選抜なんて・・・と思う方もいるかもしれませんが、最終的に選ばれるには最後にここを通過しなければなりません。最初の関門セレクトアウトを抜けなければ先に進めないので、セレクトアウト向けの準備ももちろん大事ですが、付け焼き刃では通過できない最終選抜に向けた準備も早めに頭に入れておくことは必要なことでしょう。期間1か月半に渡り、18日間におよぶ試験で宇宙飛行士候補者を選ぶ試験は、超濃密です。JAXA宇宙飛行士選抜側との最後の真剣勝負、閉鎖環境試験シリーズの2回目です。

閉鎖環境試験シリーズ② はじめに

前回は、ゴリゴリの理系には不得意にしている方も多いかもしれない穴場のディベートに焦点を当ててみました。
少なくともぼくは大の苦手でした。議論や討議の経験が浅かったのが苦手な理由だったと思います。コツをつかんで慣れることで確実に上達しますので、準備しておきましょう。実際に模擬ディベートやってみると良いですね。決して、“論破”とか“相手をやっつける/打ち負かす”のではなく、建設的に議論を展開していくことを目指したいですね。

今回は、閉鎖環境試験での本丸であるチームスキルに焦点を当てていきます。JAXAが非常に重視している資質です。特に、前回第5期選抜はコマンダーを担える人物を選びたかったことがありチームスキルが重視されましたが、この傾向は続いていくだろうとぼくは思っています。
若田飛行士、星出飛行士がコマンダーとなりました。日本人が世界のリーダーになれることを証明しました。おそらく油井飛行士もコマンダーとなるでしょう。次回以降も、当たり前のように、世界の猛者たちをリードできる位置を日本人宇宙飛行士が担えることを前提として、新しい宇宙飛行士人材を求めていくことになると思います。

では、チームスキルに焦点をあてて、閉鎖環境試験を深掘りしていきます。

閉鎖環境試験で測られるものとは?

宇宙飛行士選抜プロセスで、閉鎖環境試験を取り入れているのは日本(JAXA)だけです。
2週間のスペースシャトルミッションから6か月の長期ISSミッションに変わることを受け、1998-99年に行われた第4期選抜で初めて採用されたこの試験ですが、導入を決めるにあたっては議論がありました。

懸念や反対意見は以下のようなものでした。
・NASAではやっていない。
・学術的に有効な手段と言えるのか?
・宇宙での長期ミッションへの適性は、地上での隔離施設でたかだか1週間滞在することで評価できるか?他に方法があるのでは?

それに対する専門家の回答は、懸念や反対を払しょくする完全なものでした。
宇宙飛行士資質を見抜くための受験者評価のための試験や面接は決して完璧とはなり得ない。宇宙での長期ミッションへの適性は、総合的な人間性評価のための手段が必要。
・閉鎖試験は、長期宇宙ミッションを模擬した隔離施設で1週間滞在に耐えられるかが目的ではない。受験者の行動を継続的に観察することで、評価の判断ソースを最大化することである。(精神ストレス下での安定性、グループでの行動スタイル)
ストレス環境下での行動を観ずに宇宙飛行士候補を選抜するべきではない。最終選抜では複数の専門家によって観察が行われるべきである。
隔離施設における試験は、受験者に均質的にストレスを与えることができ、複数の専門家が観察することができる理想的な環境である。

また、この閉鎖環境試験を行うに当たっては、精神・心理の専門家による評価を以下のようにセットで導入し、閉鎖環境試験前中後の精神・心理の変化の観察が行われます。
・精神科医によるインタビュー@隔離施設に入る前、出た後に実施
・心理学者によるインタビュー@隔離施設に入る前、出た後に実施
・精神科医および心理学者による行動観察@隔離試験中毎日実施
・睡眠状況の観察のため、アクチグラフにより取得したデータを参照

ぼくは、このJAXAオリジナルの閉鎖環境試験の目的を後から知ったとき、どんぴしゃ的を射た試験になっていたし、宇宙飛行士資質の審査に非常に有効性が高い試験に仕上がっていたと、改めて痛感しました。

宇宙での長期ミッション模擬という観点では、1週間という短さ / 緊急事態があればすぐに出られる安心感 / 宇宙食とは程遠い豪華な食事など、宇宙ミッションにおけるストレスとしては甘いのでは?と感じていましたが、専門家の「閉鎖試験は、長期宇宙ミッションを模擬した隔離施設で1週間滞在に耐えられるかが目的ではない。受験者の行動を継続的に観察することで、評価の判断ソースを最大化することである。」という回答には合点がいきました。
一方、1週間ぶっ通しで、監視カメラで監視されっぱなしの生活では、面接だけでは見えてこないかもしれない、その人となり、その人の素が現れてきます。他の受験者との共同生活を行いながら、ストレスのかかる環境に置かれるわけですから、なおさらです。
閉鎖環境を受けた受験者の多くは、「最初は無理をして自分以上の何かを出そうと頑張ろうとし空回りしたけど、理想的なふるまいをし続けることを諦め、ありのままの自分で行こう!」と早い段階で吹っ切ったと言っていました。

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