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宇宙飛行士選抜試験の正体 実はめちゃくちゃ大事なこと⑧ ~非認知能力を高めよ②~

~非認知能力を高めよ②~
今月は2回に渡って、セレクト・アウトで使われるようなテスト方式では簡単に測ることができない“非認知能力”について考えてきました。
密着したNHKは言いました。『宇宙飛行士選抜は、総合人間力を測る試験だった』それはまさに、点数では測れない”非認知能力”を測る試験だったということです。
2回目の今回は、”非認知能力”はこれからでも高められる!そのためには日頃どういったことに気を付けたら良いか?航空宇宙業界で用いられている手法を徹底的に掘り下げるともに、”非認知能力”を高めていく思考方法について考えていきます!!

導入

ぼくが13年前に宇宙飛行士選抜試験を受験していたころは、この“非認知能力”についての明確な知識がなかったので、選抜プロセスの初期のころは、どうしても英語だったり、筆記試験だったり、視力だったり、数値で測れる認知能力の基準ばかりを気にしていました。どうしても試験で測られるもの(つまり分かりやすいもの)に焦点が行ってしまい、選抜試験の後半で測られることになる“非認知能力“を高めよう!という意識はありませんでした。というより、手法が分からなかったというのが正しいかもしれません。なんとなく”チームワーク“とか”リーダーシップ“は必要だよね、程度の考えでした。
最終選抜を受けていく中で、そして密着したNHKが記した「“人間力”を徹底的に調べ上げ試験」というのを踏まえて振り返ると、様々なシーンにおいてあの手この手で“非認知能力“を測られていたんだなということが後から分かったわけです。

ぼくが選抜試験を終えた後(特に閉鎖環境試験を終えた後)に感じたのは、

「この人がチームにいるとうまくいく」
「この人がいることによって、みんなの力がうまく引き出されてチームパフォーマンスが最大化され、チームが勝てる(うまく回る)」

そういう能力を持った人を見極めようとしていたんだなということでした。
その能力というのが、まさに“非認知能力“。
一言で「~の能力」とは表現できない、様々な能力の組み合わせであり、経験値が物を言う能力であり、総合人間力と言えるものなんだと思いました。

では、そういった能力はどうすれば身につくのでしょうか?
どういうトレーニングを積めば向上させることができるのでしょうか?
まずは、航空宇宙業界で取り入れられているCRM(クルーリソースマネジメント)を見ていきましょう。

事故から生まれたCRM

戦後、世界中のエアラインが一斉に台頭してくる中で、航空機の事故が頻発していました。
当時は、飛行機の機体や航法技術、空港や地上設備、整備技術などが未発達であったことからもたらされた事故が数多く起こっていました。

しかし、その後1975年頃までの25年ほどで、テクノロジーの進歩によりこのような事故は大幅に減少しました。ただ、事故はゼロにはならず横ばいに推移しました。そこで、事故原因の究明のための事故分析が行われました。
1988年に出された調査研究報告では、航空事故の約80%がコクピットクルーの行動とパフォーマンスにその要因があるとされました。そしてそれらの中にはコクピットクルーの個々の知識や技術には関係なく、機材等に致命的な不具合があったわけでもないのに起こってしまったケースが多く含まれていました。

有名な悲劇的事例があります。
1977年スペイン領カナリア諸島テネリフェ島で起きたテネリフェ空港ジャンボ機衝突事故は、滑走路上でジャンボ機2機が衝突し583名の犠牲者を出した史上最悪の事故で「テネリフェの悲劇」と呼ばれています。この事故は数々の不運が連鎖して起きたものですが、以下が事故原因として挙げられています。
・濃霧で管制塔から視認ができなかった
・無線交信において管制塔と両機において思い込みがあった
・コクピット内で機長や他のクルーの関係において、機長の思い込みや錯覚に対して他のクルーが強く主張できなかった
厳しい自然条件は重なったものの、ヒューマンエラーが招いた大惨事でした。

このような状況を受けてNASAは、1979年開催のワークショップでCRM(Cockpit Resource Management)と題した発表を行い、航空業界におけるヒューマンエラーを防ぐために不可欠な要素を以下のように整理しました。

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宇宙飛行士選抜試験の正体 実はめちゃくちゃ大事なこと⑧ ~非認知能力を高めよ②~

Takashi UCHIYAMA/内山崇

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2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。