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宇宙飛行士選抜試験の正体 実はめちゃくちゃ大事なこと①

~押さえておきたい選抜のしくみ~
2021秋の第6期JAXA宇宙飛行士選抜では、史上最多の応募者数となることは必至です。選抜過程の”最初の関門”であり、応募者数が増えるとさらにその難易度と重要性が増してくるプロセスである“セレクト・アウト”をくぐり抜けることです。ひとりひとりに対して詳細な試験・検査を行い、「ライト・スタッフ」を見抜く過程に進む前段プロセスである“セレクト・アウト”について、しっかりとそのしくみとツボを押さえましょう。
戦いの前には戦う相手(=選抜試験)を知ることがとても重要なのです。
※“セレクト・アウト” 集団から不適格者を排除していく選抜方法のこと(⇔“セレクト・イン” 集団からずばり適格者を選ぶ選抜方法)

宇宙飛行士選抜のしくみ

宇宙飛行士黎明期の選抜方法は、映画「ライト・スタッフ」にもあるように“セレクト・イン”の手法を採用していました。軍に所属するパイロットの中から、基準以上の資質を持つ人物を選び出していました。
しかし、宇宙飛行士のバックグラウンドの多様性が進む中で、必ずしも一定の基準だけでずばり適格者を選抜することが難しくなりました。パイロットはオペレーションスキルに長けているでしょうし、技術者はシステムや装置の設計に詳しい、医者は宇宙における身体の変化や身体の異常に対する対処に長けています。それぞれのバックグラウンドが違う集団に対し、一意の合格基準を設定することは、偏りが生じてしまったり、真の適格者を選び出すのに障害となってしまったりしうるわけです。

そこで採用されることになったのが、“セレクト・アウト”です。合格ラインではなく、不合格ラインにより、不適格者を弾いていく手法です。「ライト・スタッフ」を正確に見抜くため、より精密な選抜を行うには、ひとりひとりに時間をかけて様々な試験や検査を行う必要があります。そのために序盤で“セレクト・アウト”によりふるいにかけ、人数を絞るわけです。これまでの選抜では、この“セレクト・アウト”の過程で、おおむね50名以下程度に絞り込んでいます。

また、選抜過程はすべてにおいて客観性が求められています。これはJAXAが「どうしてこの人を選んだのですか?」に対する説明責任を果たすために絶対必要なことです。つまり、選抜項目のすべてにおいて、その評価結果を数値化し、それを集計すると機械的に選抜されるという考えうる限り厳密なプロセスが構築されていると考えた方が良いです。とはいえ、数値化できないものもあるし、評価には必ず主観が入る(絶対に主観を排除しきれない)し、たとえ数値化したとしても、完ぺきではないため総合点数の近い人に対しては点数以外の要素で審査員の中での議論が行われることになると、ぼくは思っています。ただ、実際はそうだったとしても、基本的には厳密な客観性に基づいたものであると理解するのが最も近いと思います。世間の会社の昇進等でよく聞く、お気に入りを一本釣りするようなことは絶対にないと言って間違いないでしょう。

▼ セレクト・アウト説明図・・・総合点や平均点勝負ではなく、致命的な不適合がないかを調べる試験

202101_セレクトインアウト説明

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宇宙飛行士選抜試験の正体 実はめちゃくちゃ大事なこと①

Takashi UCHIYAMA/内山崇

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2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。