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宇宙飛行士を本気で目指すきみへ③ ~「月」について知ろう①~

~「月」について知ろう①~
次の有人宇宙探査のステージは「月」です。
冷戦下でアポロ11号が成し遂げた月面着陸から50年余。当時は月がゴールでした。次に我々がやるべきは、その先につながる技術獲得であり、恒久的な月面基地建設であり、未来の人類の活動領域拡大にダイレクトにリンクしていく持続的な宇宙活動です。
なぜ我々は再び「月」を目指すのか? 
国の有人宇宙活動の主軸が月周辺活動となるのであれば、「月」は我々の未来の職場です。探査時代の宇宙飛行士を目指すなら、自分の中でしっかりと咀嚼しておくべきでしょう。月のことはよく知っておくべきですし、どれだけの可能性を秘めた国際プロジェクトであるか、その魅力を伝える使命があります。
そんな「月」について掘り下げていきましょう。

ぼくにとっての「月」

日本では古くから「月」は親しみ深い存在でした。
月の神ツクヨミノミコト(月読命または月読尊)、中秋の名月、うさぎの餅つき、かぐや姫…
一方、海外では狼男が代表されるように、満月は人を狂わせるなどネガティブなイメージがあるようです。

そんな、昔から地球や人に大きく影響を与えてきた「月」が、有人宇宙開発における次の目的地として世界中から大注目を浴びています。その先にある火星を見据え、本格的に月周辺および月面における活動を立ち上げようとしているのです。

50年余前、アポロ計画で人類は月の地を踏んでいます。しかし、後に活動を続けるためのインフラは残しませんでした。「月」以遠へと段階的に活動を広げていく計画まではありませんでした。「月」がゴールだったのです。
そして科学の進歩が行われた今日では、その技術力を存分に投じることで、継続的な「月」周辺での活動ができる大規模インフラの構築を含め、次なる目的地「火星」の有人探査へとつながっていく、中継点として「月」周辺の開拓を進めていくことが、ISSの次の巨大国際プロジェクト「アルテミス計画」として、実現に向けて一歩一歩進められています。

前回の第5期宇宙飛行士選抜では、ISSの次は「月」という明言こそありませんでしたが、受験者の誰もが、選ばれたらISSの次に月へ行ける可能性が十分あるだろうと思っていました。13年前から当然のように意識していた次なる目的地、それが「月」なのです。

ぼくが生まれたのは、歴史的なアポロ・ソユーズドッキングが行われた年です。米ソ冷戦中の宇宙開発競争に終止符が打たれ、宇宙の平和利用の時代に移ったあとの世代ということになります。アポロの月着陸をライブでは体験しておらず、過去の偉業として知っているだけです。アポロ17号(1972年)以来、人類は「月」の地を踏んでいません。

ぼくたちが生きている時代に、再び人類が月の地を踏み、月面における様々な探査活動を行い月や地球の起源を解明し、さらには月面および月周回軌道上に恒久的に滞在できる拠点の構築まで成し遂げたいと、強く思っています。「月」までは地球の庭という状態にしたいですよね。

映画「アポロ13」でジム・ラヴェル(Jim  Lovell)役のトム・ハンクスが、親指で隠しながら片目で月を眺めるシーンは、とてつもなくカッコイイと思っています。一人で月を眺めるときには密かによくやっています。また、1/6の重力下で飛び跳ねてみたいですよね。
ぼくの生まれ年の干支は「うさぎ」です。同じくうさぎ年の若田光一宇宙飛行士と、月で餅つきをしたいという密かな野望も持っていました。
最近の取材で2度ほど「一番好きな天体は?」という質問を受けましたが、「月」と答えました。
眺めるだけではなく、行ってみたいと強く思う魅力に満ち溢れた天体だと思います。
「宇宙」と同様に、ぼくは「月」にも魅せられているのだと思います。

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Takashi UCHIYAMA/内山崇

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\(^o^)/スキありがとうございます!
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2008(~9)年第5期JAXA宇宙飛行士選抜試験ファイナリスト。宇宙船「こうのとり」初号機よりフライトディレクタを務め、9機連続成功に導く。現在、新型宇宙船開発に携わる。趣味:バドミントン、ゴルフ、虫採り(カブクワ)。宇宙船よりコントロールの効かない2児を相手に、子育て奮闘中。